DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)


愛知県立豊川特別支援学校のDXハイスクール事業

「ワクワクから広がる、新しい学び」 ~知的障害特別支援学校の実践~


DXハイスクール事業について

『高等学校DX加速化推進事業(以下DXハイスクール)』とは、文部科学省が令和6年度から開始した、デジタル社会の未来を担う人材を育てるための支援事業です。デジタルや理数分野の教育を重視したカリキュラムを実施し、ICT(情報通信技術)を最大限に活用した「文理横断的」かつ「探究的」な学びを強化することを目的としています。

本校はこのDXハイスクール事業の採択校として、知的障害のある生徒一人一人の特性や実態に応じた ICT・デジタル技術の活用 に取り組んでいます。

知的特別支援学校において、DXハイスクールの取組事例はまだ多くありません。
そのような中、本校では 「特別支援学校だからこそ必要なDXとは何か」 を問い続けながら、学習・生活・将来の社会参加を見据えた実践を行ってきました。


本校が目指すDXの姿

本校が目指すDXの姿は、「最先端機器を目の前にした生徒たちの『ワクワク』した気持ちを、学習の動機付けやさらに学習を深めようとする自発的な動力として、生徒の興味関心と可能性を最大限に引き出し、自立した社会参加へとつなげる教育へのアップデート」であると言えます。

1. 生徒の「できた!」を増やし、自信(自尊心)を育む姿
本校のDXハイスクールの核心は、コンセプトである「ワクワクから広がる学び」にあります。

  • 成功体験の積み重ね「触ってみたい」「作ってみたい」というワクワクした気持ちで描いたイラストがその場で形になったり、ロボットを思い通りに動かせたりしたとき、「もっとやりたい!」にワクワクが広がります。このような成功体験を何度も経験して、「自分にもできる」という自尊心の向上を目指します。これは将来の社会参加に向けた大きな原動力につながると考えています。

2. デジタル技術で「学びの壁」を取り払う姿
障害特性に合わせた環境整備により、「個別最適な学び」を目指しています。

  • 個に応じた支援:「行ったことのない初めての場所が不安…」そのような不安を少しでも解消できるよう、AIやデジタル教材、VR技術などを活用し、多様な実態のある生徒一人ひとりに適した事前学習ができる環境を作っていくことを目指しています。
  • 論理的思考の育成:プログラミング学習教材などを通じ、目標達成のために試行錯誤する過程で、「自分の決断が結果につながる」という論理的な考え方を身につけます。さらに、改善方法やより良い方法を考える自発的な学びの機会としてとらえています。

3. 社会や地域と「X(クロス)」でつながる姿
DXハイスクールは高等部の中だけで完結せず、小学部、中学部ともデジタル機器を通じてより強くつながっていきます。さらに、DXハイスクールの取組は学校の中だけで完結せず、外部の知見を積極的に取り入れることができるように地域の企業や大学とつながりを広げていきます。

  • X(クロス)リレーション(連携): 地域の工科高校のもつ技術力と、特別支援学校のニーズを掛け合わせ(クロスさせ)、ニーズを満たすためのコミュニケーションロボットの研究や実用的なデバイス開発に挑戦する大学と連携します。
  • 地域社会への参画:木工所やショッピングモール等と連携し、デジタルものづくりを通じて地域のイベントに参加したり、エコ活動(ペットボトルキャップ回収)を支援したりすることで、「社会の一員である」という実感を生徒に届けます。

4. 教員も生徒と共に挑戦を楽しみ、成長する姿
DXを推進する土台として、教員自身が「負担」ではなく「ワクワク」を感じられる体制を目指します。

  • DX担当者との伴走体制:DX担当者が教員の伴走者として共に取り組むことで、校内全体のデジタル活用の心理的ハードルを下げ、教員の「やってみよう」をサポートします。
  • 教員の研修環境の効率化:近隣の木工所と連携したレーザー加工機の講習会や大学教授を招聘して3Dプリンター講習会を実施。また、機器を使った授業をDX担当者がサポートできる体制を構築。OJT(On-the-Job Trainingオン・ザ・ジョブ・トレーニングの略、「働きながら学ぶ」)の方法を取り入れ、機器を使った授業をDX担当者と相談し、一緒に授業を展開することで、生徒と同じように機器の使い方を教わります。教員の「やってみたい」気持ちをそのまま生徒たちに届けられるように、そして生徒と向き合う「本来の教育」に使える時間を増やすことを目指しています。

導入している主なICT機器・環境

DXハイスクール事業を活用し、主に以下のような機器・環境を整備しています。

  • VRゴーグル
  • 360度カメラ
  • レーザー加工機
  • 3Dプリンター
  • 3Dモデリング学習ソフト
  • 3Dモデリングペンデバイス
  • プログラミング学習教材

操作のしやすさや視覚的な分かりやすさを重視し、知的障害のある生徒でも安心して活用できるICT環境づくりを進めています。


取組事例① 初めての場所も怖くない!「VRでドキドキをワクワクに」

~体験を通して「わかる・できる」を実感~

最新の「VRゴーグル」や「360度カメラ」を、行事の事前学習に活用しています。

  • どんな活動?: 修学旅行で行く大阪の街並みや、太陽の塔の圧倒的な大きさを教室にいながら体験しました。また、自転車での横断歩道の渡り方をVR空間で練習しています。
  • ここがすごい!: 初めての場所が苦手な生徒も、事前に「本物に近い体験」をすることで、不安を減らし、見通しをもって安心して当日を迎えられます。
  • 未来のカタチ: 現在、ゴーグルを付けるのが難しい生徒も一緒に楽しめるよう、教室の壁に3方向から映像を映し出す「没入型(ぼつにゅうがた)教室」の研究も進めています。

取組事例② 地域の工場ともコラボ!「レーザー加工機の魔法」

~「自分で動かす」「作れた」という成功体験~

生徒たちが描いたイラストを、素敵な作品に変える「レーザー加工機」が大活躍しています。

  • どんな活動?: 木製の「名刺入れ」や「置時計」、キーホルダーなどを作っています。地域のバット製造工場と協力して、バットの飾り台を作ったこともあります。
  • ここがすごい!: 自分のアイデアが「本物の製品」のようなクオリティで完成することで、生徒たちは「自分にもできた!」という大きな自信を手にします。
  • 未来のカタチ: 卒業記念品を自分たちでデザインして制作するなど、想いを形に残す新しい「ものづくり」の定番になっています。

取組事例③ どう動かせばゴールできるかな?「ロボットと一緒に考える楽しさ」

プログラミング学習教材やタブレットを使って、プログラミングに挑戦しています。

生徒の個人情報保護のため生成AIにて画像を加工
  • どんな活動?: 「前に進む」「右に曲がる」といった命令を組み合わせて、ロボットを動かします。自分たちでコースを作り、ロボットが思い通りに動いてゴールできるまで、友達と話し合いながら何度もプログラムを作り直します。
  • ここがすごい!: 失敗は「間違い」ではなく、成功への「ヒント」です。何度もやり直す(試行錯誤する)ことで、問題を整理し、順序立てて解決策を見出す力(論理的思考)が自然と身についていきます。
  • 未来のカタチ: 「自分の決めたことが、結果につながる」という経験は、将来、自分自身で物事を決めて社会で自立していくための大切な自信になります。

取組事例④ 想像が本物の形に!「3Dプリンターで新しいものづくり」

最新の「3Dプリンター」や、形を読み取る「3Dスキャナー」を使って、立体的な作品づくりに挑戦できるように計画しています。

  • どんな活動?: 例えば扱いやすい紙粘土で作ったキャラクターなどを3Dスキャンして「世界に一つのキーホルダー」を作ったり、陶芸の授業で使う「オリジナルの模様スタンプ」を自作したりすることができます。
  • ここがすごい!: 自分のアイデアが目の前で少しずつ本物の形になっていく様子は、まるで魔法のようです。指先を細かく動かすことが難しい生徒も、デジタルの力を借りることで、自分の思いを自由に表現できるようになります。
  • 未来のカタチ: 今後は、自分の手にぴったりの筆記用具の持ち手(補助具)を自分で設計して作るなど、デジタルの力で自分の生活をより便利で豊かにする、まるで「発明家」になったようなワクワクする学びを目指します。

これまでの取組を踏まえて(令和8年度に向けて)

これまでのDXハイスクールの取組を通して、ICTやデジタル技術は、生徒の学びや生活を支える 大きな可能性 を持つことを実感しています。

令和8年度は、これまでの実践を土台にしながら、授業や学校生活の中で、より一層ワクワクしてより一層効果的なDXの活用を進めていく予定です。

今後も、知的特別支援学校としての視点を大切にしながら、本校ならではのDXハイスクールの取組を推進していきます。

DXハイスクール伴走機関及び企業

本校のDXハイスクールに協力またはサポートしていただいている関係機関及び企業を紹介します。

  • データ協力 TosterCookBook ファブラボ広島安芸高田 様
    LINEヤフー株式会社が運営するオープンコラボレーションハブ「LODGE」が共同で公開